別名サフィの独り言

気ままに生きてる宇宙人の映画とか読書とか勉強とか。

拝啓、初天神。

 

浮世が憂き世だとしても、居直ってやる。 

 

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こんにちは、ワタシです。

サフィです。

 

あいも変わらず、人様に迷惑をかけて生き恥を晒してみっともなく生きてます。

 

突然ですが、今日から一回生の若手の会です。

 

若手の会っていうのはワタシが所属してる落語研究会の一回生の寄席です。

 

一回生が学内の公演に出られるのはこれが初めて。

つまり、これは一回生の初めての公式の高座で、いわば初高座なんですよ。

 

今年三回生のワタシも一回生の今頃はガチガチになって高座に上がったものでした。

 

  あれから二年経ちました。

 

今日はそんな話をしたいと思います。

 

ワタシが落研に入った頃、今と違って女子はほとんどいなくて同期に女子はワタシ一人きりでございました。

 

 部室は汚くて、ついでになぜか部員もきたなどころが勢ぞろいしていてそれはそれは汚ならしいものでしたよ。

 

   若手の会のネタを決めて二年前のワタシもなんか訳もわからず練習したものでした。

 

ワタシが選んだのは初天神というネタ。

好きだ、っていうだけで選んだ。

今思えば無謀な選び方だったとおもう。

 

でも、夏の合宿で同期の中で一人だけ全体練習に落ちて、合宿でみんなの前で泣き崩れて、しょんぼりと帰路についた空がぼっかりと燈色で夏の過ぎ去るのを見送ったのを覚えています。

 

 一人だけ全体練習におちたワタシは同期のみんなが自分よりずっと上にいるように見えてました。

 

小鹿くんの浮世床は安定感があって、彼のやりたいことが見えていて、

多妻来くんの一目上がりは面白くないネタを選んだのに、自分の色に染めて笑いが取れるようになっていたし、

幡汰くんの寄り合い酒はふんだんに入れられたくすぐりはセンスが光ってて、

王茶偉くんの動物園は誰より楽しそうで見ていたらこっちまで笑顔になってしまう

我闘くんの阿弥陀池は同じ同期にこんなことができるのか羨ましくて華やかで綺麗だった

歯死くんの堀之内は下手くそ呼ばわりされてるのに誰よりも面白かった。

 

一つ一つの若手の会の同期の全体練習をワタシは今でもはっきり思い出せて、

その一つ一つがワタシにとって衝撃的だった。

 

 

ワタシは、なにもなせないまま若手の会の高座にあがって、当然のように滑って笑いも取れずに喪失感と一緒に高座を降りた。

 

 その日、ワタシはトリとして最後に高座にあがっていて、いつかここに戻って来たときはしっかりと背筋を伸ばしてお客さんに向き合って、自分も楽しい落語ができるように、なんて思った。

 

そう、一回生の夏公演のときみた先輩のあの万両婿みたいな。

 

 だけど、落語をすればするほど同期との間が開いて行くみたいで、いつも追いつきたくて必死でした。

 

 そんな日々の中で、部室でしょげながら作業をしているワタシに先輩が聞かせてくれたあるネタに一目惚れしてその日のうちに台本も書いた。

 

  それからいろんなことがあって、

落語を通していろんなことに出会って、

自分なりのやりたい落語とか生意気過ぎる芸論とかそういうのが胸に育っていった。

 

だけど、口に出すのも恐れ多い気がして。

言葉にしたら、それを否定されたら悲しいからしまいこんでしまった。

 

  そんな日々の中でワタシを助けてくれたのは初天神の次のネタ、真田小僧をもっていったある賛助先のお客さんでした。

 

立命落研は老人ホームとか幼稚園とかいろんなところに落語を見せに行く公演ボランティアをやってるんだけど、

 

 当時先輩に誘われて行ったある賛助先で、

初めてワタシは人に思い切り笑ってもらうことができたんですね。

 

 初めて笑いがとれたとき、話の途中なのにびっくりして止まりかけて大急ぎで次のセリフを脳の中で用意したのを今でも覚えてる。

 

お客さんの一人のおばあさんが、落語が終わった後のワタシに

「お嬢ちゃん、面白かったよー。

また来てね?」

 

と言ってくれた時、泣きそうになって、やっぱり泣いてしまった。

 

 それからはいろんなネタをあげた。

 

魚を知らない田舎者、勘当されて湯屋で奉公する若旦那。

インチキな道具を売りつける道具屋さんに、トンチンカンな葬式を企画するバカ息子たち、そして長屋に住んでる若い衆。

 

仲良くなれた人たちもいたし、仲良くなれない登場人物もいたけどその一つ一つが周りから見ればそうは見えなかったかも知れないけれどすごく楽しかった。

 

 下手って言われても、滑っても、受けてもうまく行ってもいつも、また次はどうするかワクワクしてた。

 

下手の横好きと言われてもいい、ワタシは高座が好きだ。

 

 落語家の名前もネタの名前も出囃子の名前も、歴史も覚えきれないけど、確かにワタシは落語が好きだ。

 

   でもどうしても自信が持てなかった。

 

でも、今年の若手の会で、あの日のワタシのように初天神を選んだ子がいて、9月にその子のマンツーマンを見てあげたときのこと。

 

 言葉で説明してもどうしてもわかってもらえなかったところがあったんですね。

 その場面は、ワタシも苦手な場面だったから、気持ちはすごいわかった。

 

 本当に自信はなかったけど、

ワタシは後輩の前に正座してその場面をやったとき、

 ごく自然に思わず後輩がプッと吹き出したんですよ。

 

それが、本当にびっくりで、多分ワタシが落研に入って一番嬉しい笑いでした。

 

ああ、二年前苦手でできなかった場面を後輩に今教えてて、その上笑ってもらえて。

 

下手だ下手だと言われて自分でもそう思ってたワタシも三年間でほんの少しだけど成長できてたのかなあ。

 

 そんなことをぼんやりと思って本当に幸せな気分だった。

 

 いろんなことで傷ついて、大事な同期も何人かやめたりこなくなって

置いてかれた気分で退部さえ考えて、あの日書いた台本さえ捨ててしまったけど、

 

あと一回だけ落語がしたいなあ、と思った。

 

 ああ、あの日聞いたあのネタをやってた噺家みたいにかっこいい出囃子で上がってみたい。

トリで高座に上がりたい。

叶えられなかったやりたかったこと、そして憧れのネタ。

 

言いたくても言えなくて、

願ったけど叶わなかったやりたかったことが溢れて来てしまう。

 

 何を遠慮することがあるんだ。

今まで我慢して抑え込んで、今更失うものもなければ、

持ってるものも一つもない。

 同期に引け目を感じることなんてないし、

ワタシだけしか持ってないものだって大量にあるはずだ。

  取り残されたなんてめそめそしてる場合じゃない。

 ワタシはここに居直って、ここでなすべきことをなし自分の三年間を終わらせないといけない。

 

  なんて、レディーガガのborn this wayを聞きながら思った。

 

ああ、余談だけど強気になりたかったらkpopか洋楽がいいよ。

 強くなった気分になれる。

 

 

まあ、そんなこんなでなんとか台本を完成させた今日。

 

そして、明日が若手の会で無自覚にもワタシを救ってくれた後輩くんの初天神の披露が行われます。

 

 

 彼も含めて一回生全員、落語といい出会いができればいいと思います。

 

 それは、別に若手の会でウケるとかそういうことではなくて。

 

ワタシが賛助先のおぼあさんやお客さんのおかげでもっと高座に上がりたい、と思ったあの瞬間。

 あれこそがワタシと落語の出会いだったようにおもうように、

 

たとえ若手の会がうまくいっても行かなくてもその先は長いから、何回も迷って何回も落語に出会ってほしいです。

 

 

  あと一回高座に上がるためにワタシはやらないといけないことがたくさんある。

 それは練習は勿論だけど、こんなワタシに三年付き合ってくれた今いる同期との時間を取り戻すこと。

 寄席に協力してくれる後輩と向き合うこと。

 

全部やり直さないといけない。

 

 

ワタシはもう少しで落研は終わるけど、

それぞれ一人一人にかけがえのない物語ができるのが落研の面白さだとおもうから一回生にはぜひぜひ何回も落語に出会ってほしい。

 

ちなみにこのブログは恥ずかしいから一回生には見せない。

 

あと、明日もやってるからよかったら来てくれ。

初天神あるし。

 

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そんな感じで、今日はお時間でございます。